歯科材料のジルコニアセラミックとは?という質問を受けることがあります。
これは、一言で言えば現在のところ最高品質の歯科材料ということになるでしょう。
葉が欠けてしまったり、あるいは虫歯などで抜歯せざるを得なくなってしまった場合、何らかの人工の材料で歯の代わりとするものを作ることになります。
歯科材料のジルコニアセラミック

この材料ですが、基本的には2種類です。
一つは金属で、もう一つはセラミック、つまり陶磁器のように粘土のような無機物を焼き固めたものになります。
一般的に食器などに用いられる陶磁器は間違いなく粘土を成型して焼き固めたものですが、歯科材料としても用いられるものは原料は必ずしも粘土とは限らず、いろいろな無機化合物が用いられています。
このうち金属については昔からよく用いられているものです。
今でも金歯とか銀歯などという言葉が広く使われているように、金や銀などの金属は人工の歯として用いられています。
ただ、どんな金属でも歯科材料として使えるわけでは決してありません。
物をしっかりと噛めるためにはある程度の硬さが必要ですし、もちろん錆びたりしては困ります。
このようなことから金や銀が良く使われているのですが、金や銀は実はそのままでは歯としては柔らかすぎる上に、歯の形に成型することも困難です。
そのため実際には純金や純銀ではなく合金ですし、また水銀を含むアマルガムとして用いられることも多く、水銀による健康被害を心配する人もいます。
セラミックの利点
一方でセラミックのような陶磁器的な物質には金属にはない利点もあります。
まず、金属のように酸などによって溶け出したりしませんからアレルギーの心配がありません。
もちろん水銀のように健康被害を心配することもありません。
ですが、やはりマイナス点もあります。
例えば、確かに陶磁器はそれなりに硬いですが、金属と比べると粘りに欠けますから、衝撃を受けるとひび割れたりすることはあります。
また、長期間使用しているとどうしてもすり減ってきたり、あるいは色が変わってきたりすることもあります。
このような点は金属でも多かれ少なかれ同じことが起こりますし、それを言い出せば生まれつき持っている天然の歯であっても突き詰めれば同じことが起きるとも言えますから、あまりも高望みをし過ぎるのも考え物ではあるのですが、それでも少しでも天然の歯に近づけたいと思う気持ちはあるでしょう。
このような要請から作られた歯科材料がジルコニアです。
ジルコニア
宝石に詳しい人であれば名前くらいは聞いたことがあるかもしれませんが、化学的には二酸化ジルコニウムというもので、金属であるジルコニウムの酸化物です。
結晶は無色透明で非常に硬く、また光をよく屈折させることから、ダイヤモンドの代わりとして宝飾品に用いられることもあるくらいです。
この世の中で最も硬い物質がダイヤモンドで硬度10とされていることはよく知られているでしょう。
ダイヤモンドに次ぐ硬度9を持っているものがルビーとサファイアです。
ジルコニアはそれに続く硬度8を誇り、これはトパーズと同じ硬さとなります。
ちなみに鋼鉄など金属の硬度はせいぜい5程度に過ぎません。
このように非常に硬いという良い性質を持っているのですが、歯科材料としては先ほども少し述べたように硬いだけでは実は不十分です。
いくら硬くでも、衝撃に弱くては割れや欠けの原因になってしまうからです。
そこで二酸化ジルコニウムに別の金属の酸化物を少し混ぜます。
これにより綺麗に整った結晶の中に若干ではありますが歪んだところが生じることになり、かえって衝撃に強くなるという性質を持たせることができるのです。
あまりに綺麗に整いすぎている結晶体では、その結晶の中に一旦欠けや割れが生じると、結晶の構造に沿って一気にそれが広がっていってしまいますが、初めから少しの歪みを加えておくことで、欠けや割れが生じても一気に広がることなくその歪みの部分で食い止められるという性質があるからです。
このように別の金属の酸化物を少し混ぜたものを安定化ジルコニアと呼び、実際に歯科材料として用いられているものはこれになります。
宝石にも用いられているくらいですから強度はもちろん十分で、衝撃にも強いという性質を持たせることができます。
さらに、ダイヤモンドの模造品にも用いられるくらいに光を透過させますから透明感のある、審美的にも非常に優れた歯を作ることが可能です。
非常に優れた性質を持っている

当たり前のことではありますが、単体ではむしろ透明すぎて歯の白さを表現するには逆に適当ではありません。
不透明な材料を少しだけ混ぜることによって歯の白い輝きを表現することになります。
また、ジルコニアは金属ではありますが酸化させていることによりセラミックとしての性質を持つことになり、金属のように溶けだしてくるということがありません。
すなわちアレルギーを起こしたり、健康被害を起こしたりする心配もまずありません。
このように非常に優れた性質を持っている歯科材料がジルコニアセラミックなのです。